県外からも依頼を受ける県内大手ながら、社員高齢化が目下の課題。
経営安定を模索する中、新事業として大人気の「あいちゃんキムチ」に、参画を依頼しました。
会社とキムチ、二人三脚で新たなスタートです。
鳥羽警備保障は、交通誘導や警備業務を行う会社です。現在社員は45人。県内には約40社の警備会社がありますが、40人以上の人材を有する警備会社はわずかです。
そのためか、西は熊本県から東は富山県まで、県外からの依頼も多くあります。地元で人員を確保できず、委託先を探して当社に辿り着かれるようです。
しかしながら、業界全体の流れでもありますが、社員の高齢化が進んでいます。当社も65歳以上の方が増えています。
若い方に「かっこいい」と思っていただきたいとヘルメットやユニフォームを変えたりと工夫をしていますが、将来に向けて別の事業の柱を立て、経営の安定化を図りたいと考えていました。
私が「あいちゃんキムチ」に出合ったのは10年ほど前でした。知人に勧められたのです。
辛いものは苦手なのですが、このキムチは美味しいと思いました。辛さが尖ってなくて、甘味があってまろやか。いままで食べたキムチは購入から少し経つと酸っぱくなりますが、あいちゃんキムチは味が変わりません。すっかりファンになりました。
ところが、だんだん入手が難しくなりました。
キムチを作っておられるのは、西谷愛子さん。韓国出身の70代の女性です。JAの直売所などで販売されていましたが、知人に頼まれた分だけを作るようになられて、それも徐々に途絶えがちになりました。
私の他にも、あいちゃんキムチを待つたくさんのお客さまがいらっしゃるはず。私は当社の新事業としてキムチ製造を立ち上げ、一緒に作ろうと西谷さんに申し出ました。
当社にとっては、収入安定化への道が拓けます。西谷さんも生活の糧を得られますし、後継者が育てば多くの人があいちゃんキムチを食べられます。一石何鳥にもなるのです。
西谷さんは「もうキムチ作りはやめようと思っている」と最初断られましたが、熱意を伝えると、「ここまで自分のキムチを愛してもらえて嬉しい。これも私の使命かもしれません」と、承諾してくださいました。周りの人たちからも「やめるのはもったいない」「また食べたい」という声が届いていたようです。
たまたま食品製造をしていた建物が賃貸物件にあり、早速手配しました。2022年8月ごろから準備にかかり、10月から製造開始。いま西谷さんと若手のスタッフが、あいちゃんキムチの白菜漬けとするめ漬け、大根漬けを一緒に作っています。
あいちゃんキムチは、西谷さんが韓国でご自身の母親に習った味が基本となっています。来日後、倉吉の男性と結婚されてから、夫の舌を頼りに日本人に好まれる味を何十年もかけて追求されました。もう何十年もこの商品名で販売されていて、子どもからお年寄りまで幅広く愛されています。
一番の特徴は果物、特に梨の果汁が味の決め手となっていることです。これが何とも奥深い、それでいてスッキリとした甘さを醸すのです。よそにない、ここだけの味だと確信しています。
使用する梨は二十世紀梨や新興など。もちろん地元産です。県中部は、さまざまな梨が作られている一大産地ですから。
用いるのは、市場に出ない規格外の梨です。傷付いたりして廃棄される梨を生かしたいという思いもあったそうです。収穫期に1年分の果汁を搾り、冷凍保存します。
キムチは、日々の天候の変化や用いる野菜の産地、状態などで味が変わる、とても繊細な食品です。そうした揺らぎを梨がうまくまとめて安定させ、なおかつ味に深みを与えます。西谷さんは「味が高まる」と表現されます。
梨のほかにも、ラッキョウやリンゴ、桃なども使っています。果物キムチなのです。
キムチというと、塩漬けした白菜に唐辛子をまぶしたらできそうな気がしますが、そんな単純ではありません。加える果汁の酸味も計算が必要ですし、その日の野菜の水分量、気温なども考慮します。味が変わらないよう、作るたびに調整が必要です。
何しろ、同じ材料で同じように作っても「手が変われば味が変わる」と言われるほど。とても奥深いのです。
それだけ複雑な、しかも長い年月をかけて完成されたキムチですから、味を継承するのも一朝一夕とはいきません。ある程度の時間をかけて、少しずつスタッフが覚えていってくれたらと期待しています。
西谷さんも「味を残したい気持ちはある」と仰っていますし「お客さまに間違いのないものを届けて、会社を盛り上げたい」と張り切ってくださっています。
警備会社がキムチの製造販売を始めたのが珍しいと、発売後に何軒か取材を受けました。新聞やテレビであいちゃんキムチの復活を知った人から、たくさん電話をいただきました。やはり、待っていた人たちがいたのです。鳥取から岡山に嫁いだという方からは、30パックも注文をいただきました。
いま、1回に製造できるのは200パックほど。県中部を中心にJAの直売所や道の駅などで販売しています。機械で大量生産はできませんし、あまり焦らずに、数年はスタッフに技術を学んでもらいます。
生産力が備わってきたら宣伝して、将来的には県外にも広めたい。その前段としてインターネット販売しようと、いま準備を進めています。
地元の梨を使っているので、鳥取県や県中部のPRにもなると期待しています。
会社名 合同会社 鳥羽警備保障
所在地 鳥取県東伯郡北栄町江北426
担当者 代表社員 鳥羽圭介
連絡先 0858-36-5511
とっとり中部発信プロジェクト
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